「それってNFTである必要ある?」
この問いかけを今まで何度も耳にしましたし、ワタシ自身もこれを自問自答してきました。この記事では、その答えを探っていきたいと思います。
そもそもNFTとはどのような技術だったでしょうか?
従来のデジタルデータはコピー可能であったため、オリジナルのものと、コピーされたものを区別することができませんでした。
NFTは、デジタルデータにブロックチェーン上で識別子をつけることで、オリジナルであることを証明し、唯一性をもたらす技術です。
(日経新聞社のツイートで掲載されていた画像の一部)
「ブロックチェーン上で識別子をつける」とは具体的にはどのような意味でしょうか。これは小学生でも分かる、非常にシンプルなことをやっているだけです:
世界中の誰でも見れる公開ノートに、
画像X = 1番 = Aさん
画像Y = 2番 = Bさん
画像Z = 3番 = Cさん
と、デジタルデータに番号と所有者を割り振っているだけです。
これによって、デジタルデータを「所有」することができます。
(ここでの「所有」とは、法律上のなんらかの権利に紐づくものではなく、ブロックチェーン上で、そのNFTが自分に紐付いていることを証明でき、誰の目から見ても明らかことを指しています。)
Twitterの六角形アイコンはブロックチェーンから情報を取得していて、私がこの画像のオリジナルのNFTを所有していることを証明しています。
DigiDaigakuのファウンダーGabeが私をフォローしてくださいましたが、六角形であることが功を奏したと思っています。私が300万円払ってDigiDaigakuのNFTにコミットした張本人であることが、六角形によってひと目で証明されたのです。
これは、一種の自己表現でもあります。Gabeへの愛をNFTを通じて語りかけているのです。Gabeの推し活です。自分この子ガチ推しですが??

さて、NFTによってデジタルアイテムを所有できるようになり、それだけでも十分にすごいことなのですが、ここでさらに出てくる強化武器が「希少性」です。NFTは、数量の上限を自由に規定することができ、それがブロックチェーン上で公開されます。
私がTwitterでプロフィール写真に設定したDigiDaigakuのNFTを、日本人の全員が持っていたらどうでしょうか?お母さんも、親戚のおばちゃんも、全員持っていたら?近所の小学生も全員持っていたら?それなら私はプロフィール写真にしていません。
いまDigiDaigakuのNFTは世界中で注目され始めているNFTで、数も2,000個程度に限定されていて、300万円もする高級品であるため、決して簡単に手に入る代物ではありません。いま日本でDigiDaigakuのGenesisを持っている人はもしかしたら100人未満じゃないでしょうか?
そんなイケてる高級品だからこそ、いち早くプロフィール写真にすることに意味があるのです。それによって私はクールだと世界にアピールできるのです。
それを褒められた暁には、
脳汁がぷしゃーーーーっと出るふなっしー状態になります。
こんな脳汁体験は、コピー可能なJPEGだったら当然不可能でした。
スタートアップは、既存の製品に対して10倍の体験を届けないといけないという有名な話があります。また、そんな10倍の体験を実現する新しいプロダクトは、既存製品とは全くの別物になっている、ということがしばしばあります。
NFTも同じだと思います。NFTはJPEG画像に対して10xであるため、もはや別物ですから、比較することすら難しいです。
そんなNFTは、JPEGと違って、オリジナルなものを証明でき、それを所有できるため、価値がついていきます。JPEGにお金を払う人はいませんでしたが、NFTにはお金を払うようになりました。この、NFTが値付けされるものであるという事実も非常に重要だと思っています。
DigiDaigakuのNFTがもし値付けされていなかったらどうでしょうか?
2,000個の限定品ですが、他人に売ることはできず、いくら相当の物なのかよく分からなかったらどうでしょう?クールさが半減します。
二次流通市場で300万円で売り買いされている事実があるからこそ、クールなのです。価値がちゃんと可視化されているからこそ、すっげ〜〜〜、SUGEEEEEってなるのです。値付けされていることが重要なのです。
とはいえ、値付けされていても、その価格が非常に安かったらどうでしょう?
例えばDigiDaigakuのNFTが30円だったらどうでしょう?いっきにクールじゃなくなります。小学生がうまい棒を買うノリで学校帰りにコンビニでDigiのNFTを買ってたら?幻滅します。(全国の小学生さん、すみません。)
この記事のトップ画像にさせていただいているメタバースOLさんのNFTも(ご本人快諾済🙏)、高価でレアなNFTだからこそ、SUGEEEE🔥🔥🔥YABEEEE🔥🔥🔥となります。
冒頭の、「それってNFTである必要ある?」に対する私の答えは「唯一性、希少性、高級による脳汁ぷしゃー体験ができるのはNFTだけ」です。
JPEGとは違うってのはなんとなく分かったけど、web2のデジタルアイテム、例えばフォートナイトのスキン課金でも同じような体験が出来るのでは?という質問が来そうです。
JPEGは誰でも複製可能でしたが、フォートナイトのスキンは、持っている人しかゲーム内で見せびらかすことができません。
たしかに、JPEGよりマシです。ただ、フォートナイトのスキンには何千万円の価値はつかないと思われます。
全部で○○個しかないコレクション、そのうち、自分だけの唯一のモノ、ということを証明できないからです。そもそもそうゆう設計になっていません。希少性と唯一性が、誰の目から見ても明らかでないといけません。
また、そもそもアプリ内課金には金額上限が課されているという話もあります(これはGabeが言ってたこと)

そして、web2のデジタルアイテムだと、自慢の幅が小さくなります。フォートナイトのスキンを自分が所有していることを、ゲーム外で周りに自慢する方法は限られていました。スマホのゲーム画面を友だちに見せるしかありません。あるいはスクショをとってSNSに投稿するしかありません。NFTは、特定のサービスの外部のあらゆる場所で、見せびらかすことができるようになります。Twitterの六角形アイコンが良い例です。

NFTの良さがわかったところで、どのようにNFTをサービスに組み込み、活用していけば、10xな体験を作れるか考えてみたいと思います。
実は、この問いの設定自体が間違っていることに気づいたのではないでしょうか。
NFTは既に10xなんです。NFTネイティブな体験とはなにか?と頭をひねる必要などないのです。既に10xなんですから。
あくまで私見ですが、答えるべき問いは、
「どうすればNFTの10x性を損なわずにすむか」
かもしれません。
例えばSTEPN運営が人類の健康を促進するために、80億人全員がSTEPNのNFTスニーカーを持つ世界を実現したとしましょう。
このスニーカーNFTは完全にコモディティ化してしまい、わずか数円の価値しか持たなくなるのではないでしょうか。現実の靴と違って、NFTスニーカーは製造原価もほぼかかりません。
たしかにその数円のスニーカーNFTは、所有できるし、所有しているアイテムは唯一性もありますし、数円で二次流通させられる利便性もあります。
ただ、みんな持ってるから、クールで特別なものじゃありません。それなら、NFTではなく、STEPNのデータベースを使って、普通のデジタルアイテムとしてやるのとあまり変わらないかもしれないとすら個人的には思ってしまいます。
CryptoKittiesが誕生した2017年、NFTのコアユースケースは、ゲームになると多くの人が予想したのではないでしょうか。デジタルアイテムを所有できるようになるのがNFTなら、ゲーム内アイテムがNFTになる、と考えるのは非常に自然です。
ですがフタを開けてみると、NFTに最初に火をつけたコアなユースケースは、ゲームではなく、1万個限定のPFP(プロフィール写真)コレクションでした。
これは決して偶然ではないと思います。NFTの10x性を最大限に活用・維持したのが、1万個限定のPFPコレクションだったからです。
web2系のアプリやゲームが、サービス内アイテムをNFT化するケースがけっこうあります。これにはおそらく注意が必要で、アイテムを全てNFTにしたからといって、そのサービスの体験が10xになるわけではなりません。
NFTの10x性をうまいこと維持する設計にする必要があるのではないでしょうか。希少性を殺さないようにする、など。
(なお、誰にも注目されていない無名のプロジェクトが、1,000体限定のキャラクターNFTを組み込んだゲームを作りました!と言うだけではNFTに価値は付かないので、そもそも、その限定品NFTに価値をつけるのは、別努力が必要というのは言わずもがなかと思います。)
さて、最後にDigiDaigakuの話をしましょう。DigiDaigakuは「FREE OWN」というコンセプトを提唱しています。
これは「タダでNFTを配ってしまう」という斬新な手法であり、Web3ゲームがFREE OWNを駆使することで、10億人をWeb3にオンボードさせることができると言っています。(前回コラム#001参照)
そのため私は、DigiDaigakuは10億人にひたすらNFTをタダで配っていくのだろうと思っていました。するとDigiDaigakuのファウンダーのGabeはTwitter Spaceでこのように言うのです:
最初はSuperbowlで注目集めて、何百万個のNFTをタダで配ろうと思っていた。でもやっぱりやめた。BAYCはMagazineの表紙になって、みんな当然どこかで買えると思って見に行ったら、まさかの1万個しかなくて、買えない、となった。買えないから欲しいって思う。手に入らないから意味がある。周りのみんな持ってたら別にそんなに欲しいってならない。微妙になる。Superbowlで1万個のコレクションをやる。これを、2億人が見る。スゴイことになる。
言われてみれば当たり前なのですが、ハッとしました。DigiDaigakuは、希少性を保ったまま、10億人にもスケールさせようとしているのです。
Gabeは、その先にどんな世界を見ているのでしょうか?Twitter Spaceで、こんなやり取りもありました。
Gabe:
1Bドル(10億ドル)するNFTが生まれる。みんながクールだと思う。RichだからとかPoorだからとかじゃない。1BドルもするNFT、シンプルにcoolじゃん、という話
リスナー:
でも誰かがそれを持ってるわけでしょ?(※石ころ補足:おそらく、特定の所有者がいるから、全員が持てるわけじゃないし、クールなのはその人だけでしょみたいなニュアンス)
Gabe:
誰が持ってるかとかどうでもいい。1BドルのNFTが存在してるだけでクールなんだよ
NFTは脳汁プシュー体験ができるのが良いと上の方で書きましたが、ホルダーだけに限った話ではないということです。持っていない人による羨望、「欲しいいいい、いいなぁ・・・」という気持ちを掻き立てること。それが話題を生み、熱量を生むのではないでしょうか。逆に既に持っている人の間では強力なコミュニティが立ち上がります。

最初上記のGabeの話を聞いたときはいまいちよく分かりませんでしたが、今ならなんとなく分かります。Gabeは本気で、1BドルのNFTが誕生する世界を見つめています。
1Bドルというのはユニコーン企業のバリュエーションなので、ユニコーンが買える金額のNFTが生まれるのかと言われると半信半疑ですが、桁が何個か落ちれば、全然ありえる話だと私も最近は思っています。
NFTクリエイターのれんれんさんがこんなことを言っていました(引用元):
初音ミクの原画のようなNFTが、世界にいくつかしかない限定品として残っていて、DigiDaigakuのNFTがそうであるように、初音ミクNFTがボーカロイドのサービスやゲームにも何かしらの形で繋がっていたらどうでしょうか。何億円の価値がついていてもなんら不思議に思いません。
また、web2ゲームにNFTを組み込んでしまうと、新規ユーザーは二次流通でアイテムを買えてしまうので、1次販売の売上が落ちてしまい、運営側がアイテムをわざわざNFT化するメリットが無いよね、という議論があるあるだったりしますが、
安いNFTをぐるぐるさせちゃうと、そのように思います。ただ、数億円するNFTが乱立するサービスではどうでしょうか。数億円するNFTがユーザー同士で取引されるたびに、ロイヤリティの10%が運営に入ったら?話は変わってくるのではないでしょうか。
さて、ここまでNFTである必要性、NFTである価値を考えるために、非常に希少で高価なNFTにこそ意味がある、という極端な捉え方で考えてきましたが、現実にはもちろんグラデーションの世界になるのではないかと思います。
また、クリエイターさんの一点物のNFTは全く別議論になると思いますし、前回のコラムでも書いた通り、私の推しアーティストさんのライブ限定NFTなら、無料だろうが数百円だろうが数千円だろうが数万円だろうが喜んで手に入れてPFPにします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。終わりです。
【追記】 2023年2月6日 16:50
読者様のコメントを受けての追記:

