【翻訳版】Web3についての私の第一印象
こんにちは、石ころです。
メッセージングアプリSignalの創業者であるMoxie Marlinspikesさんが書かれたMy first impressions of web3という記事(2022年1月に書かれたもの)が示唆に富む内容だったので翻訳版を紹介します。
Moxieさんの記事書いたよという元ツイートは3万いいねがつき、イーサリアム創設者のヴィタリック・ブテリンや、イーロン・マスクもリプをし、良い意味で物議をかもしたようです。
個人的にも今年読んだWeb3関連の記事で一番面白いと感じました。
翻訳はDeepLをベースに各種改変しています。
私は自分を暗号学者だと思っているにもかかわらず、"Crypto "には特に惹かれていない自分がいます。実際に「私の芝生から出て行け」と言ったことはないと思いますが、新しいNFTの情報よりも、「crypto」が「暗号学」を意味していたというPepperidge Farm Remembers風味のミームをクリックすることの方がはるかに多いです。
【石ころ補足】「〇〇がまだ◯◯だったときのこと覚えてる?」というテンプレ文とともに使いまわされる、下記のミーム(ネタ画像)のことを指しています。(「クリプトがまだ暗号学を指していたときのこと覚えてる?」というセリフのバージョンが無かったので、他のパターンで代替しています。)
【補足終わり】
また、正直に言いますが、私は生活のあらゆる面を機械化された経済に移行させようとする世代的な興奮を分かち合えません。
技術的な厳密な話のレベルでも、私はまだ信者にはなれていないのです。そこで、最近Web3と呼ばれているものに注目が集まっていることを受けて、この分野で何が起きているのか、自分が見落としていることはないか、徹底的に調べてみることにしました。
私が1と2についてどう思うか
web3という言葉はやや曖昧なため、web3が抱く野望を厳密に評価するのは難しいのですが、一般的なテーゼは、web1は分散化され、web2はすべてをプラットフォームに集中させ、そしてweb3が再びすべてを分散化するというものです。web3はweb2の豊かさを与えてくれるとともに、しかし分散化もしてくれるはずです。
そもそもなぜ中央集権的なプラットフォームが出現したのか、その理由をはっきりさせるのはきっと良いことでしょう。私の考えでは、その説明はとてもシンプルです:
人々は自分のサーバーを運営したがらないし、これからもそうでしょう。web1の前提は、インターネット上の誰もがコンテンツの生産者であり消費者であると同時に、インフラの生産者であり消費者であることでした。
私たち皆が、自分のウェブサイトを持つ自分のウェブサーバー、自分の電子メールのための自分のメールサーバー、自分のステータスメッセージのための自分のフィンガーサーバー、自分のキャラクターを生成するための自分のチャージンサーバーを持つことに。しかし--これはいくら強調してもしきれないと思いますが--人々はそれを望んでいません。人々は自分のサーバーを運営したくありません。
現時点では、オタクでさえも自分のサーバーを運営したいとは思っていません。フルタイムでソフトウェアを作っている組織でさえ、現時点では自分のサーバーを動かしたくはないのです。この世界について学んだことが一つあるとすれば、それは、人々は自分たちでサーバーを運用したがらないということです。それを代わりにやってくれる会社が現れ、成功し、そのネットワークで可能なことをベースに、新しい機能の改善を反復する会社はさらに成功したのです。プロトコルはプラットフォームよりもずっとゆっくり動きます。30年以上経っても、Eメールは暗号化されていません。一方で、WhatsAppはわずか1年で暗号化されていない状態から、完全なe2ee(end to end encryption)に移行しています。人々はいまだにIRC(Internet Relay Chat)で確実に動画を共有するための標準化を進めています。その一方で、Slackではあなたの顔からカスタムリアクション絵文字を作成することができます。
これは資金の問題ではありません。何かが本当に非中央集権的であれば、それを変えることは非常に難しくなり、しばしば時が止まったままになってしまいます。それはテクノロジーにとって問題です。なぜなら、他のエコシステムは非常に速く動いており、それについていけなければ失敗してしまうからです。そのため、アジャイルのような方法論を定義・改善し、膨大な数の人々を組織化する方法を見つけ出そうとしている産業が並行して存在しています。できるだけ早く動けるようにすることが、非常にクリティカルだからです。
テクノロジーそのものが、動きよりも静止を助長するようなものであれば、それは問題です。成功の秘訣は、90年代から抜け出せないでいるプロトコルを取ってきて、それを中央集権化し、素早く反復することでした。
しかし、web3はそれとは異なることを意図していますので、見てみましょう。この領域について素早く知り、将来的にどうなるかをよりよく理解するために、私はいくつかのdApps(dencentralized apps = 分散型アプリ)を作り、NFTを作成することにしました。
分散型アプリをいくつか作ってみる
Web3の世界を知るために、Autonomous ArtというdAppを作りました。これは、誰でもNFTにビジュアルの貢献をすることで、トークンをミントすることができるものです。ビジュアルの貢献をすることのコストは時間とともに上昇し、貢献者がミントのために支払った資金は、以前のすべてのアーティストに分配されます(この金融構造を視覚化すると、ピラミッド型に似たものになります)。この記事を書いている時点で、38K USD以上(500万円弱)がこのコレクティブルアート作品の制作に費やされています。
私はまた、原資産に紐づく金融デリバティブと同様に、原資産であるNFTに紐づくNFTデリバティブを作成、発見、交換できるFirst DerivativeというdAppを作りました。
どちらも、この領域がどのように機能するかについて感じ取ることができました。誤解のないよう、明確にするためにに言うと、アプリ自体には特に「分散型」の要素はなく、普通のリアクティブなWebサイトです。このdAppsの「分散」とは、状態や、状態を更新するためのロジックやパーミッションが、「中央集権」なデータベースではなくブロックチェーン上にあることを指しています。
暗号通貨の世界でいつも不思議に感じていたのは、クライアント/サーバー・インターフェースに注意が払われていないことです。人々がブロックチェーンについて語るとき、彼らは分散型トラスト、リーダーレスの合意、そしてそれらのすべての仕組みについて語りますが、クライアントが最終的にその仕組みに参加できないという現実は、しばしば覆い隠されるのです。ネットワーク図はすべてサーバーのものであり、トラストモデルはサーバー間のものであり、すべてはサーバーのものなのです。ブロックチェーンはピア同士のネットワークとして設計されていますが、携帯端末やウェブブラウザがピアの1つに実際になれるような設計にはなっていません。
モバイルへの移行により、私たちはクライアントとサーバーの世界でしっかりと生きており、前者が後者の役割を果たすことは完全に不可能です。この疑問は、私にとってこれまで以上に重要なものに思えます。一方、イーサリアムでは、サーバーを「クライアント」と呼んでいます。つまり、トラストを有さないクライアント/サーバー・インターフェースがどこかに存在しなければならないのに、その言葉すらなく、成功すれば最終的にサーバーよりもクライアントが何十億(!)も多くなることを認めていないのです。
例えば、モバイルやウェブで動いているかどうかに関わらず、Autonomous ArtやFirst DerivativeのようなdAppは、状態(集団で制作したアート作品、その編集履歴、NFT派生物など)を変更したりレンダリングするために、ブロックチェーンと何らかの形でやり取りする必要があるのです。しかし、ブロックチェーンは携帯端末(あるいは、現実的にはデスクトップのブラウザ)には存在できないので、クライアントからこれを行うことはできません。そのため、どこかのサーバーで動いているノードを介してブロックチェーンとやり取りするしかないのです。
サーバー!しかし、ご存知の通り、人々は自分でサーバーを運用したがらないものです。そこで、イーサリアムノードへのAPIアクセスをサービスとして提供し、分析ツール、デフォルトのイーサリアムAPIの上に構築した拡張API、過去の取引へのアクセスを提供する企業が登場したのです。これは...聞き覚えがありますね。現時点では、基本的に2つの会社があります。ほぼすべてのdAppsは、ブロックチェーンとやり取りをするためにInfuraかAlchemyのいずれかを使用しています。実は、MetaMaskのようなウォレットをdAppに接続し、そのdAppがウォレット経由でブロックチェーンとやりとりする場合でも、MetaMaskはInfuraへのコールを行っているだけなのです。
これらのクライアントAPIは、ブロックチェーンの状態やレスポンスの真正性を確認するためのものは何も使っていません。コールの結果は署名されてさえいないのです。Autonomous Artのようなアプリが「このスマートコントラクトのこのビュー関数の出力は何だ」と言うと、AlchemyやInfuraは「これが出力です」というJSONブロブで応答し、アプリはそれをレンダリングします。
これには驚きました。(人は)これほど多くの労力とエネルギーと時間を費やして、トラストレスな分散型合意メカニズムを作り上げたのに、それにアクセスしようとするクライアントは事実上すべて、この2社からのアウトプットを信頼するだけで、それ以上の検証を行うことなくアクセスしているのです。また、プライバシーの面でも最良の状況とは思えません。もし、あなたがChromeでウェブサイトを操作するたびに、リクエストがまずGoogleに送られ、その後、目的地までルーティングされ、戻ってきたとしたらどうでしょう。それが今のイーサリアムの状況です。もちろん、すべての書き込みのトラフィックはブロックチェーン上ですでに公開されていますが、これらの企業は、ほぼすべてのdAppsにおけるほぼすべてのユーザーからのほぼすべての読み取り要求も見ることができるのです。
ブロックチェーンの信奉者は、この種の中央集権的なプラットフォームが出現しても、状態そのものがブロックチェーン上で公開されているので、これらのプラットフォームが悪さをした場合、クライアントは単に他の場所に移動すればよいから大丈夫だ、と言うかもしれません。しかし、これはプラットフォームを成り立たせている力学を非常に単純化した見方であることを私は指摘します。
例を挙げましょう。
NFTの作成
私はより伝統的なNFTも作りたいと思いました。NFTというと画像やデジタルアートを思い浮かべる人が多いと思いますが、NFTは一般的にそのデータをオンチェーンに保存しているわけではありません。ほとんどの画像のNFTの場合、それではあまりにもコストがかかりすぎます。
NFTはデータをオンチェーンに格納する代わりに、データを指すURLを格納します。この規格で驚いたのは、URLにあるデータにはハッシュコミットメントがないことです。人気のあるマーケットプレイスで数十ドル、数百ドル、数百万ドルで売られているNFTの多くを見てみると、そのURLは、どこかのApacheを実行しているVPSを指しているだけであることが多いのです。そのマシンにアクセスできる人、将来そのドメイン名を購入する人、そのマシンを危険にさらす人は誰でも、NFTの画像、タイトル、説明などをいつでも好きなものに変更できます(トークンを「所有」しているかどうかに関係なく)。NFTの仕様には、画像が「どうあるべきか」を示すものはありませんし、あるものが「正しい」画像であるかどうかを確認することさえできません。
そこで、画像を提供するウェブサーバーは、リクエスト元のIPやユーザーエージェントに応じて異なる画像を提供することを選択できるため、実験として、誰が見るかによって変化するNFTを作りました。例えば、OpenSeaではあるように見え、Raribleでは別のように見えましたが、購入してクリプトウォレットから見ると、常に大きな💩の絵文字として表示されるようにしました。入札したものが手に入るわけではありません。このNFTに変わったところはなく、そもそもNFTの仕様がそのように作られているのです。最高値のNFTの多くは、いつでも💩絵文字に変わる可能性があり、私はそれを明示しただけです。
数日後、警告も説明もなく、私が作ったNFTはOpenSeaから削除されました。
この削除では、私が何らかの利用規約に違反したとされていますが、規約を読んでみても、どこから見られるかによって変化するNFTを禁止するものは見当たりませんし、私は公然とそのように記述していたのです。
ただ、それよりも最も興味深かったのは、OpenSeaが私のNFTを削除した後、私のデバイス上のどのクリプトウォレットにもNFTが表示されなくなったことです。これはweb3ですが、どうしてそんなことが可能なのでしょうか?
MetaMaskやRainbowなどのクリプトウォレットは「Non-Custodial (非保管型)」(キーはユーザー側で保管)ですが、上記の私が作ったdAppsと同じ問題があります:ウォレットは、モバイルデバイスやブラウザ上で動作しなければなりません。一方、イーサリアムや他のブロックチェーンは、ピアのネットワークであるという考えで設計されていますが、モバイルデバイスやブラウザがそのピアの1つになることが本当に可能であるような設計にはなっていないのです。
MetaMaskのようなウォレットは、残高、最近の取引、NFTの表示といった基本的なことから、取引の構築、スマートコントラクトとのやり取りなど、より複雑なことまで行う必要があります。要するに、MetaMaskはブロックチェーンと対話する必要があるのですが、ブロックチェーンはMetaMaskのようなクライアントが対話できないように作られているのです。そこで、私のdAppsのように、MetaMaskはこの分野を統合した3社にAPIコールをすることでこれを実現しています。
例えば、MetaMaskはetherscanにAPIコールをすることで、最近の取引を表示します。
GET https://api.etherscan.io/api?module=account&address=0x0208376c899fdaEbA530570c008C4323803AA9E8&offset=40&order=desc&action=txlist&tag=latest&page=1 HTTP/2.0
...InfuraにAPIコールすることで、口座残高を表示します。
POST https://mainnet.infura.io/v3/d039103314584a379e33c21fbe89b6cb HTTP/2.0
{
"id": 2628746552039525,
"jsonrpc": "2.0",
"method": "eth_getBalance",
"params": [
"0x0208376c899fdaEbA530570c008C4323803AA9E8",
"latest"
]
}
...OpenSeaにAPIコールをすることでNFTを表示します。
GET https://api.opensea.io/api/v1/assets?owner=0x0208376c899fdaEbA530570c008C4323803AA9E8&offset=0&limit=50 HTTP/2.0
繰り返しになりますが、私のdAppと同様、これらのレスポンスは何らかの形で認証されていません。後で彼らが嘘をついていることを証明できるような署名さえされていません。ウォレット内のすべてのアカウントに対して同じ接続、TLSセッションチケットなどを再利用するので、もしあなたがウォレット内で複数のアカウントを管理してアイデンティティを分離している場合、これらの企業はそれらがリンクしていることを知ることになります。
MetaMaskには実際にはあまり多くの仕事がなく、これらの中央集権的なAPIによって提供されるデータに対するビューに過ぎません。これはMetaMask特有の問題ではありません。他にどのような選択肢があるのでしょうか?Rainbowなども全く同じように作られています。(興味深いことに、Rainbowはウォレットに組み込まれたソーシャル機能(ソーシャルグラフ、ショーケースなど)のための独自のデータを持っており、ブロックチェーンではなくFirebaseの上にすべてを構築することを選択しています)。
これらのことは、もしあなたのNFTがOpenSeaから削除されたら、あなたのウォレットからも消えてしまうことを意味します。私のNFTがブロックチェーンのどこかに消えずに残っていることは、機能的には関係がありません。なぜなら、ウォレットは(そしてクリプトエコシステム内のますます他のすべてのものは)NFTを表示するためにOpenSea APIを使っているだけで、私のアドレスが所有しているNFTのクエリーに対して304 No Contentを返し始めたからです!
この世界を再現する
web1がなぜweb2になったかという歴史を考えると、web3について私が不思議に思うのは、イーサリアムのような技術がweb1と同じように暗黙のうちに多くのトラップを抱えながら作られていることです。これらのテクノロジーを使えるようにするために、この領域は...プラットフォームを中心に集約されつつあります。再び。あなたのためにサーバを走らせ、新しい機能を反復する人たちです。Infura、OpenSea、Coinbase、Etherscanなどです。
同様に、Web3プロトコルの進化も遅いです。First Derivativeを作る際、原資産価値に対するパーセンテージでデリバティブの価格を設定できたら最高だったでしょう。そのデータはチェーン上にはありませんが、OpenSeaが提供するAPIにはあります。NFTのロイヤリティはクリエイターに利益をもたらすものとして注目されていますが、ERC-721ではロイヤリティは規定されておらず、それを変更するには遅すぎるため、OpenSeaにはWeb2空間に存在する独自のロイヤリティの設定方法があります。中央集権的なプラットフォームで素早く反復することは、すでに分散プロトコルを凌駕し、プラットフォームへ力を集約しています。
このような力学を考えると、クリプトウォレットによるNFTのビュー(閲覧 / 画面)は、OpenSeaによるNFTのビュー(閲覧 / 画面 )である、というところまですでに来ていても、驚くには値しないと思うのです。私達はOpenSeaが、置き換え可能な純粋な「ビュー」ではないことに驚くべきではないと思うのです。なぜならOpenSeaは、本来は変更することが不可能/困難な(ブロックチェーンの)規格の枠内で可能なことを超えて、プラットフォームを改善反復させることに忙しくしてきたのですから。
これは、メールの状況にとても似ていると思います。私は自分自身のメールサーバを運営することができますが、プライバシーや検閲への抵抗、(自身による)コントロールのためには意味がありません。 - なぜなら、私が送受信するすべてのメールの相手方には、どのみち(中央集権的な)Gmailが存在することになるからです。いったん分散型エコシステムが利便性のためにプラットフォームを中心に集権化すると、それは両者にとって最悪の事態になります:集中管理されていながら、時間が止まる(遅い)に足るほど分散しているのです。私は自分のNFTマーケットプレイスを作ることができますが、OpenSeaが人々が使うウォレット(そしてエコシステム内の他のすべてのアプリ)のすべてのNFTのビューを仲介する場合、追加的なコントロールをもたらしません。
これは、OpenSeaに対する不満や、彼らが構築したものに対する非難ではありません。その逆で、彼らは機能するものを作ろうとしているのです。私たちは、このようなプラットフォームの統合が起こることを予期すべきであり、それが避けられないものであることを考えると、物事がそのような仕組みならば、私たちが望むものを与えてくれるシステムを設計すべきであると考えています。しかし、私の感覚と懸念は、web3コミュニティが、私たちがすでに見ているものとは別の結果を期待していることです。
まだ始まったばかり
Web3の関係者がこのようなことを議論するとき、「まだ始まったばかりで初期段階だよ」というのが最もよく言われる言葉です。客観的にはすでに10年かそれ以上経過しているため、ある意味では、暗号通貨が比較的未熟なエンジニアリングを超えるスケールを実現することに失敗していることが、「まだ早い」と考えることを可能にさせているのでしょう。
しかし、たとえこれが始まりに過ぎないとしても(そうである可能性は大いにあります!)、それを慰めとして考えるべきかどうか、私は確信が持てません。むしろその逆は正しいかもしれないと思います。一番初めから、注意を払うべきです。これらのテクノロジーが実現のためにプラットフォームを通じてすぐに集中化する傾向があり、このことがエコシステムの速度に及ぼす悪影響はゼロであり、ほとんどの参加者はこのことを知らないし気にもしていないことに。このことは、分散化そのものは、下流にいる大多数の人々にとって、実はすぐに実用的で差し迫った重要性を持っていないこと、人々が望む分散化の量は、何かが存在するために必要な最小限の量であること、もしあまり意識的に説明しないなら、時間が経つにつれ、これらの力は私たちを理想の結果に近づけるどころか、さらに遠ざけることになることを示唆しているかもしれません。
しかし、ゴールドラッシュを止めることはできない
考えてみれば、OpenSeaは、Web3の要素がすべてなくなれば、実は足元はずっと「良く」なるのです。より速く、誰にとってもより安く、より使いやすくなるはずです。例えば、私のNFTの入札を受け入れるには、イーサリアムの取引手数料だけで80ドルから150ドル以上まで支払わなければならなかったでしょう。ガス代より安い金額で入札を受け付けて損をしてしまうため、全ての入札に人工的な下限が設けられます。クレジットカードでの支払い手数料は、通常、強要されたように感じられるが、それに比べれば安く見える。OpenSea は、会計を検証するために、取引、オファー、入札などの公開記録が必要な人がいれば、簡単な透明性ログを公開することもできてしまいます。
しかし、もし彼らがクリプトを名目としない画像売買のプラットフォームを作っていたなら、それは普及しなかったと思います。クリプトを機能させるために必要なものの多くが、すでに分散化されていないため、普及しなかったであろう理由は、分散化されていないからではありません。普及しなかったであろう理由は、(現在の普及しているパターンが)ゴールドラッシュだからです。暗号通貨の投機で儲けた人たちは、その暗号通貨を、投資をサポートしながらさらにリターンを得られるような方法で使いたいと考えているので、それが富の移転という市場の設定を定義しているのです。
NFTを取引している末端の人々は、分散型トラストモデルや支払いの仕組みには基本的に関心がありませんが、お金がどこにあるかには関心があります。よって、お金が人々をOpenSeaに引き寄せ、OpenSeaはWeb2空間でWeb3プロトコルを土台に反復改善するプラットフォームを構築することで、ユーザー体験を向上させ、最終的には、独自コントラクトではなく、OpenSea自体を通じてNFTをミントする機能を提供し、そして最終的には、Coinbaseが独自のプラットフォームで、あなたのデビットカードを介して検証済みのNFT市場へのアクセスを提供するための扉を開くことになるのです。これにより、Coinbaseが保有するダークプールを通じて、Coinbaseがトークン自体を管理し、取引手数料が不要になり、スマートコントラクトとのやり取りが一切不要になる道が開かれます。最終的には、web3の部分はすべてなくなり、デビットカードでJPEGを売買するためのサイトが出来上がります。このプロジェクトは、市場の力学のためにweb2プラットフォームとして始めることはできませんが、同じ市場の力学と中央集権の根本的な力によって、最終的にはそこに行き着く可能性が高いのです。
NFTのアーティストにとって、このような進歩は、自分たちのアートへの投機や投資が増えることを意味するので、嬉しいことなのです。しかし、web3 のポイントが web2 の罠を避けることであるなら、異なる未来を提供するはずのこれらの新しいプロトコルが、すでにこのような方向に自然に向かっていることを懸念する必要があります。
このような市場原理はおそらく続くと思います。私の考えでは、いつまで続くかという問題は、蓄積された膨大な暗号通貨が最終的にエンジンの中にあるのか、それとも漏れたバケツの中にあるのか、という問題です。NFTを流れる資金が最終的にクリプト空間に還流するのであれば、(web2x2だけかどうかはともかく)永遠に加速し続ける可能性があります。もし、それが(クリプト空間外に)流出すれば、これは一過性のものになるでしょう。個人的には、この時点で十分な資金が作られ、それを維持するための十分な蛇口があり、これは単なる一過性にはならないだろうと思っています。もしそうなら、web3がweb2x2(web2だがプライバシーがさらにない)にならないようにする方法を、緊急に考える価値がありそうです。
創造性だけでは足りないかもしれない
私はまだweb3の世界に足を踏み入れたばかりですが、こうした小さなプロジェクトのレンズを通して見ると、なぜ多くの人がweb3のエコシステムをとても素敵だと感じるのかがよくわかります。私は、web3が中央集権的なプラットフォームから私たちを解放する軌道にあるとは思いませんし、テクノロジーと私たちの関係を根本的に変えるとも思いませんし、プライバシーに関する話はインターネットとしてはすでに並以下だと思います(これはかなり低いハードルです!)が、私のようなオタクがWeb3で構築することに興奮する理由も理解しています。少なくとも、オタクレベルでは新しいものです。そしてそれは、創造性/探求のための空間を生み出し、初期のインターネット時代をいくらか彷彿とさせます。皮肉なことに、その創造性の一部は、Web3を非常に不便なものにしている制約から生まれているのでしょう。私は、私たちが見ている創造性と探求がポジティブな結果をもたらすことを期待していますが、インターネットと同じ力学が再び展開することを防ぐのに十分かどうかはわかりません。
もし私たちがテクノロジーとの関係を変えたいと思うのであれば、意図的にそうする必要があるのではないでしょうか。私の基本的な考えは、おおよそ次のようなものです。
インフラを分散させることなく、信頼を分散させることができるシステムを設計することによって、人々が自分自身でサーバーを運営することはないという前提を受け入れるべきでしょう。つまり、比較的中央集権的なクライアント/サーバーの関係が避けられないことを予期して受け入れつつ、信頼を分散するために(インフラではなく)暗号を使用するアーキテクチャを意味します。web3について私が驚いたことのひとつは、「クリプト」の上に構築されているにもかかわらず、暗号学がほとんど使われていないように見えることです!
私たちは、ソフトウェアを構築する際の負担を減らすよう努力すべきです。現時点では、ソフトウェアのプロジェクトには膨大な量の人間の労力が必要です。比較的シンプルなアプリでさえ、何人もの人間が毎日8時間、コンピューターの前に座り続けなければならないのです。これは必ずしもそうではなく、ソフトウェア・プロジェクトに携わる50人が "小さなチーム "とは見なされない時代もありました。ソフトウェアがこれほど集中的なエネルギーと高度に専門化した人間の集中力を必要とする限り、私たちが考えるような広い目標ではなく、毎日その部屋に座っている人々の利益のために役立つ傾向があると思います。私たちとテクノロジーとの関係を変えるには、おそらくソフトウェアをより簡単に作れるようにすることが必要だと思いますが、私はこれまで、その逆が実現するのを見てきました。残念ながら、分散システムは、物事をより複雑に、より難しくすることで、このトレンドを悪化させる傾向があると思います。
gm!
(翻訳終わり)
Web3に対して懐疑的な側面が見られる記事ではあったものの、(Web3界隈のツイートや各種ブログを読む限り)Moxieさんが投じた一石は、非常に建設的なものとして、業界ではけっこう好意的に受け入れられているようです。是非について水掛け論をするのではなく、彼のように実際に手を動かしながら考えられる人はめっちゃカッコいいなと思ってしまいました。
↓このへんの著名人の反応も読むと勉強になるかと思います。
(宣伝)
このメルマガや僕のTwitterではWeb3についてリサーチしたことを発信していけたらいいなと思っていますので、もし興味があればぜひ。
(↓追記: ブロックチェーン初心者の方にも分かるように書いてみました