MVPこそUI・UXを磨き込めという話
こんにちは! 石ころです。今朝、Nikita Bierさんが興味深いツイートをしていたので、今日はこれを題材にしていろいろ書きたいと思います!
製品に多くの機能は必要ないが、テストするものは、ドイツ車のドアのように、シグナルが歪まない品質レベルに達していると感じる必要がある。歪みは、製品があまりに中途半端で、ユーザーが検討段階に進むことを許さないことから生じることがある。一般的な常識に反して、早い段階で巧妙なアニメーションを作ることが、検討段階に潜り込む最も安上がりな方法であることもある。特に、最大の不確定要素がトップファネルにある場合はそうです。(元ツイート)
ふむふむ。100回頷きながら読んだ。マジでそれなんよ。これofこれ。
って言いたいところですが、嘘です、正直よく分からん笑笑
ということで、ちょいo1の助けを借りようじゃないか。
まず、文末の「不確定要素がトップファネルにある場合」ってどうゆうことやねん
質問の文脈で「ファネルのトップに不確定な要素(最大の不確定性)がある」とは、ユーザーが最初にサービスやプロダクトに触れた瞬間、つまり認知段階(Awareness)や初期接触段階で、ユーザーがそのまま興味を持ち検討(Consideration)へと進んでくれるかどうかが明確でない、もしくは大いに疑わしい状況を指します。
具体的には以下のようなケースが考えられます。1. 最初の印象や導入部分が肝心な場合
サービスやプロダクトをユーザーが「ちらっと見る」段階で、ユーザーがすぐ離脱してしまう可能性が高いとき。たとえば、最初に表示されるランディングページやアプリ起動直後の画面で、何の面白みもなかったり、信頼感が損なわれたりして、ユーザーが「こんなの使う価値ないな」と判断してしまうリスクがある場合。
2. ユーザーがまだプロダクトの存在価値を理解していない段階
プロダクトがどんな問題解決をするのかが明確でない、あるいはユーザーに伝わっていない時点で、そもそも真剣に検討する前に「なんかよく分からないし、もういいや」と去ってしまうような状況。
3. 競合や類似サービスとの比較以前に、入口で脱落してしまうリスクが高い場合
ユーザーがサービスの詳細機能に触れて比較検討する前段階で、「UIが洗練されてない」「最初の操作が直感的でない」など、ほんの少しの戸惑いやネガティブな印象で即座に離脱する可能性が大きい場合。
まとめると、ファネルのトップ(=ユーザーとの最初の接点)での不確定性が大きいとは、「ユーザーがサービスを ‘そもそも候補として考える前’ に離脱するかどうか、その境界にある懸念」がある状態を指します。こうした状況では、後々の機能検証やUIの細かい改善以前に、まず「ここまでユーザーを進めさせるため」にファネルのトップでの品質(初期印象、アニメーション、デザインの完成度など)を高めることが重要になる、という意味合いになります。
なるほどねん。じゃあ「不確実性」がファネルの上と下である場合を表で比較してくれよい!
そゆことね。分かってきた。
じゃあ、アニメーションを凝るのがいいって話だけど、「アニメーション」ってなんのこと?デモ動画のこと?それともアプリ内のなんかしらのアニメーションのこと?
ここで言う「アプリでのアニメーション」は、デモ動画のような外部的なプロモーション用映像というよりは、実際にアプリ内でユーザーが最初に触れるUI・UX上の動き(モーションデザイン)を指している可能性が高いです。
具体的には以下のようなものが考えられます。
1. 起動時や初回起動時のアニメーション
アプリを開いた瞬間にブランドロゴがスタイリッシュにフェードインしたり、スプラッシュ画面が心地よくトランジションして初期画面へ移行する際の動き。
2. 初回オンボーディングのアニメーション
機能説明用のチュートリアルスライドがスムーズなトランジションで切り替わる、アイコンやイラストが動いて使い方を分かりやすく示すなど、ユーザーが抵抗感なく理解できるようなアニメーション。
3. 操作時のフィードバックアニメーション
ボタンを押したときに少し弾力があるような動きをしたり、画面遷移が自然な流れでスライドするなど、ユーザーが操作に対して直感的・心地よい反応を得られるUIアニメーション。
これらはユーザーが「最初にアプリを触って、もう少し触ってみようかな」と思うか、「なんだか安っぽいし、分かりにくい」と感じてすぐ離脱するかを分ける重要な演出要素となりえます。いわゆる「最初のハードル」を超えるために、このようなアプリ内の小規模・軽量なアニメーションやインタラクション演出が、検証すべき価値をしっかり伝えるための「ちょっとした投資」として有効になりうる、という意味合いです。
UIUXとかそっちの話か。
でも、他に代替策がない、深いペイン・バーニングニーズの場合は、初期ユーザーはどんな障害をも乗り越えてくる、そしてその乗り越えてきたという事実こそが、バーニングニーズ、nice to haveではなくmust haveだったことを証明するっていう話もあるじゃん。
おっしゃる通り、「深いペイン」や「バーニングニーズ」があり、ユーザーが他に代替策を持たないような状況では、どれほど初期プロダクトが洗練されていなくても、ユーザーは障害を乗り越えて使い続けます。この「乗り越えてきた」という事実が、そのニーズが単なる「nice to have」ではなく「must have」である証拠になる、という考え方はよく知られています。たとえば、社内業務フローで絶対に解決しなければならない課題を抱えたユーザーは、使いづらいUIであっても苦労して使い込むでしょう。
一方で、先述の「ファネル上部での不確実性」や「プロダクト体験の初期品質強化」について議論されているのは、必ずしもすべてのプロダクトが「絶対解決すべきペイン」を扱っていないことを前提としています。つまり、次のような違いがあります。
• バーニングニーズがある場合:
ユーザーには代替策がほとんどなく、問題解決への切実な要求があるため、UIが不格好であっても、UXが洗練されていなくても、ユーザーは努力してでも使い込む。ここではユーザーが“自ら引っ張る”形でプロダクトを求めるので、初期段階の「質的演出」の重要度は低い。むしろ、この不便さを乗り越えること自体が、そのニーズがどれほど強かったかを示す証拠となる。
• 一般的な、ニーズの強さが確証できないケース:
明確なバーニングニーズがあるか分からず、他の選択肢も容易に手に入る場合、多くのユーザーは最初のつまずきで離脱してしまう。ここでは、ファネルのトップでユーザーが導入を続けるインセンティブが弱いため、最初の印象やアニメーション、UXの磨きこみなどで「もう少し使ってみたい」と思わせる工夫が必要になる。
まとめると、両者は前提となるプロダクトとユーザーの状況が異なります。「ファネル上部での改善」や「初期UXの質」が必要とされる議論は、通常、強烈なバーニングニーズが前提になっていないか、または複数の代替策が簡単に得られる市場での話です。一方で、代替不能な深いニーズがある場合には、ユーザーはその「壁」を自力で超えることが多く、それ自体がプロダクトマーケットフィットへの強いシグナルとなるわけです。
スタートアップが「強烈なバーニングニーズが前提になっていないか、または複数の代替策が簡単に得られる市場」で製品を投入することは微妙?それとも今の時代はそうゆう製品でもOK?
「強烈なバーニングニーズがない」あるいは「代替手段が容易に得られる市場」において、スタートアップが製品を投入することは、一般的に難易度が高いとされています。なぜなら、ユーザーは必ずしも今すぐその課題を解決する必要性を感じておらず、類似サービスや別の手段が簡単に入手できる場合、わざわざ新しい製品に移行する強い動機づけが生まれにくいからです。
微妙とされる理由
1. 差別化の難しさ:
バーニングニーズが強くない市場では、ユーザーは「これでなければならない」という強い理由を持ちにくく、UI改善や価格競争などの小さな差異による差別化戦略に陥りがちです。この場合、他社が簡単に追随できるため、競合優位性を築くのが難しくなります。
2. ユーザー獲得コストの増大:
「あってもなくてもよい」レベルのサービスは、ユーザーにとって導入の心理的ハードルが高く、またリテンションも低くなりがちです。結果的にマーケティングコストやプロモーションコストが膨らみ、スケールが難しくなる可能性があります。
それでもOKな場合も
一方で、近年は成熟した市場においても、以下のような戦略で成功する例もあります。
1. UXやブランディングによる差別化:
必ずしも「バーニングニーズ」ではなくても、圧倒的に優れたユーザー体験や洗練されたデザイン、ブランド力でユーザーを獲得できることもあります。たとえば、すでに多くの代替手段がある中でUXを極限まで磨くことで、ユーザーは「他とちょっと違う心地良さ」を評価し、徐々に信者的なファンベースを形成することがあります。
2. 特定のニッチへの深堀り:
汎用的な市場ではなく、特定コミュニティやニッチマーケットに特化することで、他の代替手段が提供していない専門性・コミュニティ性・ユニークな価値を提供できる場合、バーニングニーズほどではないにせよ、「このユーザー層にとっては必須」になり得る状況を作り出すことが可能です。
3. ネットワーク効果やエコシステム展開:
初期は「nice to have」でも、徐々にユーザー数が増え、ネットワーク効果が働くことでサービスの価値が高まり、結果として「無くては困る」状態を作り出せる場合があります。SNSやコミュニティサービスなどがこの例です。
まとめ
昔ながらのスタートアップ常識(強烈なバーニングニーズが不可欠)から見れば、弱いニーズや代替の多い市場に挑むことは「微妙」とも言えます。しかし、現代ではUX重視、ブランディング、特定顧客層の開拓、ネットワーク効果の活用などを駆使して、「nice to have」な製品であっても徐々に「must have」化していくアプローチも存在します。つまり、難易度は上がるものの、完全にNGではなく、戦略次第でOKになる可能性も十分あります。
SNSのようなネットワーク効果はないけど、実際に何回か使ってみて自分で価値を確かめるまで、これは自分にとってMust Haveだ!とならない類のプロダクトある?例えばChatGPTとかって、今ではMust Haveだけど、初期にデモ動画とか、こうゆう課題を解決できる製品ですっていう訴求メッセージだけで、これはMust Haveだ!ってならなくなかった?
確かに、ネットワーク効果に依存しない、しかし実際に使ってみないと「Must Have」とは認識されにくいプロダクトは存在します。ChatGPTはその代表例と言えるかもしれません。初期段階で「自然言語モデルを使って質問に答えるサービスです」「様々な課題を簡略化します」といった訴求を受けても、それだけで「絶対に必要!」と感じる人はそこまで多くなかったでしょう。しかし、実際に数回使ってみると、「あれ、これって他のツールではなかなかできないことを簡単にできるかも」「単純なリサーチやブレスト、コードの補助、メール文章作成など、ちょっとしたタスクがめちゃくちゃ楽になる」といった具体的な有用性が肌感で分かり、結果的にMust Haveと感じるようになったユーザーは多いと思われます。
このようなケースはChatGPTに限らず存在します。たとえば以下のようなプロダクトが該当しやすいです。
1. 新しいパラダイムのプロダクト
それまで存在しなかった新ジャンルのツール(例:初期のパーソナルコンピュータ、クラウドストレージ、初期のSaaSアプリ)。
宣伝文句だけでは「何が革新的なのか」ピンと来ないが、実際に使ってみて従来の手作業や既存プロセスと比較したときに圧倒的な改善が分かり、「もうこれ無しには戻れない」となる。
2. 体験価値が説明しづらいツール
宣伝時点では「効率化」「時短」「利便性」など抽象的なメリットしか示せない。しかし、ユーザーが自身のコンテキストに当てはめて実際に操作することで、「自分が日常的に行っていた、面倒だけど仕方なくやっていた作業」がどれほど楽になるかを直感的に理解する。
3. シンプルだが汎用性が高いツール
初見では用途がはっきりと限定されていないため、具体的な「殺し文句」が弱い。だがユーザーが何度か使う中で、自分なりの活用方法を発見し、「これはいろんなシーンで応用が効く!」と気づいてMust Have化する(例:ノートツール、タスク管理ツール、汎用データベースツールなど)。
こういったプロダクトの場合、ユーザーが最初に魅力を判断するためには、訴求メッセージやデモ動画だけでは限界があります。実際に使ってみる体験フェーズがとても重要になるわけです。そのため、プロダクト提供側は「ハンズオンで試す機会」や「トライアル期間」「使い方サンプル集」などを用意し、ユーザーが最初のハードルを超えられるように工夫することで、「使ってみたらMust Haveだった」という状態へ導くことができます。
o1とのやり取りは終わり!ありがと!助かった。
ということで、Must Haveプロダクトにも2種類ある気がしてきた。殺し文句一つでMust Haveな価値を伝えやすいプロダクトと、実際に使ってもらうまで価値が伝わりづらいプロダクト。
toCサービスを作るなら、前者のものを作れたら非常にラク。Skebを開発されたなるがみさんも、ひとことで説明できるようなものを作ろうね、とよくおっしゃっています。
成功するサービスに必要な考え方をまとめた事業チェックシートを公開します
1. 事業を20文字以内で説明できますか?経験上、toCサービスは20文字以内で説明できないと流行りません。
専門用語や日本版○○といった単語を使ってはいけません。
小難しい事業を口コミやSNSで広げることは困難を極めます。
例えばSkebは「お題の絵を描くとお金がもらえる」です。
一方で、Notionみたいなやつもそうだろうし、SNSも、実際に使ってもらうまで価値が分からないタイプが多そう。
o1が言ってた、そもそもユーザー数が増えていってはじめて価値が出て気づいたらMust Haveになってるというネットワーク効果の話もそうだけど、
Snapchatの「送った写真が消える」とかBeRealの「みんなに一斉に通知が来て加工できない写真をアップするリアルタイムゲーム性」とかは使ってみないと価値が伝わらない。この面白さを体験して価値が伝達するまでの間のUIUXが低品質すぎたら、全員離脱してしまう。
TikTokが初期に「リップシンク動画をつくれるアプリ」だったときは一発でターゲット層にMust Have価値を伝えられるプロダクトだったと思うし、もちろんプロダクトやフェーズにもよる部分がありそう。
でiPhoneとかChatGPTとか、パラダイムシフトとともに登場する製品、10xによって、もはやそれまであったコンセプトや言葉、従来製品のカテゴリーで形容することすら難しい製品は、実際に使ってもらわないと価値を伝えられない。「電話もインターネットも音楽もこれ一つでできるポケットサイズのデバイス作りました!」って言われて、これはMust Haveすぎるだろおおおお!!!とはなりづらそう。
ひろゆきさんはiPhoneに対して「電話として不便で、1週間で飽きるでしょ」と言ったという話もある。(iPhoneはアプリストアの充実とともに価値が上がっていくネットワーク効果性もありそう。)
だからこそ、Steve JobsはUIUXを極限まで磨く人だったのかもしれないし、逆にそこを凝れたからこそ、ちゃんとモバイル・コンピュータのMust Haveな価値を伝えきることができたのかもしれない。
まとめると、
殺し文句一つで価値を伝えられるプロダクトは、初見で「これ私のためプロダクトじゃん!」と気づくことができるので、UIUXがガタガタだろうが、どんな障害をも乗り越えて、そのプロダクトを採用してくれる可能性がある。そしてその事実が、バーニングニーズを見つけたことの証明になる。
しかし、使ってみるまで完全に価値が伝わりきらないプロダクトも多くある。これらは、価値が伝わる瞬間までの体験が低品質だと、なんだこれよう分からんし使いづらいな、いいや、TikTokみよーっと、ってなるので、仮説検証段階の初期はUIUXとか凝る必要ないっていうプロダクト開発の常識に反して、必要であればアニメーションも凝っちゃうなどして、ドイツ車のドアを開けるようなUIUX体験にまで昇華させ、絶対にユーザーを離脱させてはならない。
起業家ができることとしては、まず自分のプロダクトの価値を一発で伝えられる殺し文句がないかを考える。無理そうなら、そのようなプロダクトにValue Propositionを変えることも考える。例えばうちの場合なら「スクリーンタイムを減らしてスマホ中毒を解決するアプリ」ではなく「SNSを開こうとすると半強制的にデュオリンゴが開くアプリ」にする、など。
Value Propositionを変えないなら、価値が伝わるマジック・モーメントまで絶対にユーザーを離脱させないためにUIUXをさらに磨き込めないかを考える。
そんな感じでしょうか。ほんじゃあまた!