こんにちは。今日は、バズっている新しいSNSのExplodeが、iOSのいろんな仕組みを組み合わせて実現しているという話、そして、非エンジニアの起業家でも、技術とかに詳しいと斬新なアプリアイデアにつながるよね、という話。当たり前といえば当たり前なのですが。
(ニキタというアルファツイッタラー起業家さんが、iMessageで消える写真を送れるSNSアプリExplodeをリリースしたという以下のニュースレターを昨日配信しましたが、その続きです。)
iMessageというのは、この左上の緑のやつで、iPhoneに最初から入っている、相手の電話番号を知ってればメッセージできるやつですね。
このiMessage、正直日本人からしたら、アプリの新規登録するときに認証コードが送られてくるときくらいしか使わないじゃないですか。
iMessageってアメリカでどんくらい使われてるん?
日本ではみんなLINEとかインスタのDMだと思いますが、
(余談:ちょうど昨日、ホロライブの星街すいせいさんが現役高校生のtuki.さんとLINE交換しようとして「ちなみに今って高校はLINEが主流ですか…?」と聞いたら「いやLINEあんま使わないです」と言われて驚愕しちゃうみたいなくだりがありましたが)
そんな日本と違って、アメリカではiMessageが使われてる。
アメリカの人はiMessageを使うらしいというのはなんとなく理解してたけど、(例えばアメリカ製のSNSアプリは登録時に連絡先連携の許可を求めてくるものが多かったり。日本だと友だちの電話番号なんて知らないからそんな設計はありえない)
特にティーンでは、思っていた以上にiMessageがめちゃくちゃ使われてるらしい。まず大前提としてティーンはほぼみんなiPhoneと。これは日本も同じはずだけど…
それでChatGPTいわく、純粋なメッセージアプリとしては、iMessageとSnapchatが一番使われるらしい。あとはインスタのDMとかDiscordも使われるのは日本と一緒で、逆にWhatsappとかはiMessageに比べたら全然らしい。
iMessageアプリってのがあるらしい
それで、これちゃんと分かってなかったんですが、「iMessageアプリ」というのがある。(日本でiMessageを使わないから、日本でアプリ開発をしている多くの人がたぶん肌感ない。)
通常のアプリと違って、iMessageの中で使えるアプリのことで、
iMessage自体はAppleが作っているデフォルトアプリですが、iMessageアプリは、3rd Partyが開発できちゃうアプリ。
中国WeChatのミニアプリとかは、WeChat内で使えるミニアプリなのにUber級のユニコーンが育ってたり、ミニアプリのエコシステム含めてレベチですが、iMessageアプリは、アプリというとちょっと大げさで、iMessage内で使えるちょっとした拡張機能程度。
例えばDuolingoのiMessageアプリってのがあって、デュオのかわいいスタンプをiMessageで送れる、とか。
どうやらDuolingoの本体アプリを入れたときに、一緒にDuolingoのiMessageアプリもくっついてきたっぽい。
言われてみれば、アプリストアでこうゆうiMessageアプリ、見たことあった。自分から入れたことなかったけど。
iMessageアプリだけのものもある(対応する本体アプリが無いもの)
あとは、iMessage用のカメラアプリ、なんかもあったり。
ニキタのExplodeアプリは、本体アプリとiMessageアプリが両方存在するタイプで、本体を入れると、一緒にiMessageアプリもくっついてきて、iMessage内で、Explodeアプリを選べるようになる。
Explodeを選択すると、カメラが立ち上がって、写真を撮れて、秒数を設定して送れる。
ただ、このようなiMessage用のカメラアプリを作ったとしても、写真をチャット画面にそのまま送るだけでは、相手が写真を見て何秒か後に、チャット画面から写真を消す、なんてことはできない。iMessageアプリ開発にそこまでの柔軟性はさすがにない。
このぬいの写真を見たら3秒後にチャット画面から消える、は無理。iMessageのチャットUIはそんなことに対応をしていない。
そこでニキタがハックしたのが、App Clipという仕組み。
App Clipってなんじゃ?これ恥ずかしながら知らなかったのですが、2020年のiOS14あたりから出ていた機能で、「アプリの一部の小さい機能」を切り出して使える、というもの。
例えば、飲食店でテイクアウトするときとか、電動スクーターに乗るときとかに、わざわざアプリをダウンロードするほどでもない、手早く一瞬サクッと使いたいだけってときに、アプリ側が用意したQRコードを読み込んだりすれば、App Clipが起動して、アプリの機能の一部を使える、的な。
今回、ニキタのiMessageアプリでは、写真を撮って送ると、写真そのものではなく、App ClipのURLが送信される。
「開く」を押すと、App Clipのカードが出てくる。
さらに、青い「開く」ボタンを押すと、何数後かに消える写真が表示される。写真を撮って返信したければ、フルアプリ(本体アプリとiMessageアプリのセット)の方を入れてね、という導線つきで。
ここまでいったん整理すると、
写真を送る側はExplodeのアプリを入れてれば、iMessage拡張機能もくっついてくるので、Snapchatはもちろん、Explodeアプリすら開かなくても、iMessage上で直接写真を撮って送れる
これだけなら、普通のiMessage用カメラアプリだけど、App Clipを活用することで、送った写真が何秒後かに消えるというUIUXを作れる
App Clipはそもそも、本体アプリを入れなくてもその一部機能を使えちゃうよ、というものなので、写真を見る側は、ExplodeアプリをダウンロードしなくてもApp Clip上で写真を見れちゃう、という便利なもの
ここでいくつか疑問が出てくる。
Webじゃダメなん?
それならiMessageで写真撮ったら、それをWebサイトに連携して、WebサイトのURLを共有するだけでええやん。iMessageアプリの上でWebサイトを開かせれば、アプリダウンロードしなくても見れるやん
→Webだとアプリと違って、スクショを防止できなくなるからWebだとダメ。これはBlack社のちいかわ社長(小川楓太さん)が言ってた。
Snapchatも最初期から、消える写真を見るときはスクショできませんよって機能をつけてたけど、ニキタのアプリでは、有料会員になれば送った写真がスクショされるのを防げるようになる(賢い)
なので、アプリのビジネスモデル的に、スクショ防止機能は必須で、これはアプリからしかできない。あとは、やればわかると思いますが、Webが開かれるより、App ClipのほうがUIUXが断然イケてる。
(※ 実際に試すひと向けの注釈:最初にアプリ本体を入れて会員登録しちゃうと、アプリを削除後に友だちにiMessageでURLを送ってもらっても、App Clipでなく本体アプリへ誘導され、App Clipを体験できなくなっちゃうので要注意。アプリをインストールする前に、友だちにアプリをインストールしてもらって、iMessageを送ってもらう、というステップでやれば体験できます)
本体アプリ内画面のURLをiMessageで送る、じゃダメなん?
そんなApp Clipとか小難しいことしなくても、iMessageカメラアプリを作るだけで、iMessage上で写真を撮って、本体アプリの画面にその写真を連携して、そのアプリ内画面URLをiMessageで送ればええやん。相手はそのURLからExplode本体アプリをインストールしたら、見れるようになるじゃん。
→ニキタはユーザーがSNSをはじめてダウンロード後、友だちゼロ人の状態でどうやってアプリ上で友だちリストを最短最速で築けるか、を考えるのが最も得意な人。
ソーシャルアプリを量産してきたらこそ、この最初のハードルが死ぬほど難関であることがたぶん骨の真髄まで染み付いている。
最近、そのハードルがさらに上がっちゃう事件もおきてた。今までの海外SNSの定石は、ダウンロード後に連絡先連携を求め、その許可さえもらえれば、友だち情報を一括取得して一瞬で友だちリストを作れたけど、iOS18からはそれが無理になった。(できるけど、ワンボタンで一括取得、というほど容易じゃなくなった。)ニキタはこれについて、ソーシャルアプリはこれにて終了、と嘆いていた。
そんな中、iMesssageとApp Clipを組み合わせれば、iMessageでは既に友だちリストが出来上がっているので、ソーシャルアプリの一番の難関である、ゼロから友だちリストを作ってあげる、というステップをすっ飛ばすことができちゃう。
もし今回、写真を見るには相手もインストールしないといけないという仕様だったら、送り手が友だちに対して最初にとるアクションは「x秒しか見れない写真を送ること」ではなく「x秒で消える写真を見れるアプリあるんだけどやらん?と誘うこと」になってしまう。これだとハードルが高くて送らないし、iMessageで既に友だちリストが出来上がっているというアドバンテージを活かしきれない。
もちろん見る側は、App Clip上で見た写真が消えたあとは「君も消える写真を送りたいん?それならフルアプリをダウンロードすればええで」と出てくるので、フルアプリをインストールしちゃえば、お互いにiMessageで消える写真を送り合える、という体験になる。
ここまで来たら、App Clipはもう使われない。App Clipではなく、Explode本体アプリが開いて、そこで見る。なので、App Clipはあくまで初期のCold Start Problemを解決するためのハックという感じ。
そのApp Clipってやつを使えばLINEで消える写真を送れるアプリを作れて、バズっちゃって、日本のエヴァン・スピーゲルという異名を手に入れてミランダ・カーと結婚できるってこと?
これは二重の意味で無理。まずApp Clipうんぬんの前に、ニキタのアプリは、iMessage上で写真を撮って送れる、というiMessageの拡張機能が土台にある。
LINE上で写真を撮れちゃう独自カメラ機能をLINE社以外が作ることができない。なので、他のアプリで撮った写真のリンクをLINEで送る、という体験になっちゃう。
じゃあ、独自に開発したカメラアプリで撮った写真をApp Clipにのせて、App ClipのURLをLINEで友だちに送ったらどうなるか。
「URLをタップ→Webサイトが開く→App Clipを開くボタンを押す→App Clip表示」
となる。
これがiMessageだったら「URLをタップ→App Clip表示」だった。
iMessageはApple製だから、App Clipとシームレスに連動するようになってる。
無念
ニキタアプリのコア機能の紹介はこんな感じでおわり。
ということで所感としては、まず日本からは絶対に生まれないアプリだよねというのと、ある程度技術に詳しくないと思いつかないアプリアイデアってけっこうあるよねーと。
技術に詳しいといっても、別にコードを書ける必要は一切なくて、Appleのいろんな機能を熟知しているとか。
WWDCでウィジェット機能が発表された瞬間にウィジェットSNSのLocketを作るとか、スクリーンタイムAPIを活用して、SNSアプリをブロックして仕事に超集中できるようになるNo More Xを開発するとかならまだ分かりやすいけど、(唐突に宣伝)
App Clipみたいなもうちょっとマイナーなものになってくるとなかなか手が行き届かない。(そういえばたしかMirrativさんの着想も最初技術ドリブンじゃなかったっけ)
ちなみに、App Clipを活用したtoCアプリは他にも出てる。
POVという海外TikTokで昨年バズっていた共有アルバムアプリがある。
結婚式とかで参加者みんながそれぞれに撮った大量の写真を全部回収するの無理ゲー、というペインに対して、
新郎新婦側があらかじめPOVというアプリをダウンロードして、QRコードを発行する。来場者はiPhoneをそのQRコードにかざすだけで、App Clipが起動して、POVをダウンロードせずに写真撮影ができる。その写真は全部、共有アルバムに格納されて、あとでみんな見れる。
結婚式は一番分かりやすい1ユースケースに過ぎず、友だち間で使われたりもするSNS。
当時このアプリを実際にちゃんと使ってみることをしなかったけど、その時にちゃんと検証していれば、少なくともApp Clipにはたどり着ける。
ということで学びとしては、とにかく自分で試してみるのが大事。10分くらいでできることだし。
そして今なら、iOS周りだけじゃなくて、AI周辺技術に詳しくないといけないし、なんか暗号資産もまた盛り上がってるみたいだし、Gabeが新しいERC規格発表してたし、忙しいな・・・
ちなみに某サトモチームが仕込んでるアプリも、こうゆう、技術の存在を知ってるか系な気がするので、超楽しみ!
おわり!(ここまで読んでいただきありがとうございました)
日本だとLINE ミニアプリのほうが主流なので、App Clipの使用例はすくないですね...。
余談ですがわたしはLINEアカウントをもっていないので、モバイルオーダーにLINEミニアプリを使用している飲食店に知らずに入ってしまい困ったことも (ブラウザーでもオーダーできればよかったのに) ...。
...というのはさておき、日本でもApp Clipの使用例がいくつかあり、以前 Coke ON Payに対応した自動販売機がApp Clipに対応しており、コードをスキャンするとApple Payで決済できるという機能がありました。モバイルオーダー系はApp Clipと相性がよさそうですね。