トークン活用の7つの教訓をSweatcoinから学ぶ
この記事は、Sweatcoinの投資家でもあるTaschaさんがツイートした内容を、石ころがご本人の許可を得て翻訳・公開するものです。
Sweatcoinという事業は、最もダウンロードされている(フィットネスの)モバイルアプリの1つで、ユーザー数1億人を抱え、年率80%の成長を続けています。
その秘訣はなにか?
それは、トークナイゼーション(トークンの活用、トークン化)です。
Sweatcoin (https://sweateconomy.com) は、歩数を記録することでトークンを獲得し、人々の運動意欲を高めるというシンプルなアイデアで、2016年にスタートしました。獲得したSweatcoinは、現実の商品やサービスを利用したり、割引を受けたりするために使用することができます。
Sweatcoinは、多くのWeb3プロジェクトが短期間で終了するのとは異なり、6年間安定した成長を謳歌しています。 現在、世界で最もダウンロードされているフィットネス・アプリの1つで、今年中に1億7,500万ユーザーに到達する勢いです。
Web3プロジェクトが彼らから学べる、ポンジ・スキームにならずに、トークンを使ってグロースをドライブする7つの教訓が以下です:
(注:私はSweatcoinの投資家です。この投稿は教育のためのものです。いずれも投資アドバイスではありません)
1. 自分が *本当に* 行っているビジネスが何なのかを明確にする
Sweatcoinはどんなビジネスをしているのでしょうか?
もし「move to earn」と答えたら、それは間違いです。
ビジネスとは、利益を生み出すプロセスです。収益に貢献する主要なプロセスは、企業が表面上販売しているものとは異なることが多いです。例えば、マリオットは不動産業、コストコは在庫管理業というように、商品名からは想像もつかないようなビジネスを展開しています。
Sweatcoinは、小売ブランドが、ターゲットとする見込み客に露出するのを支援するプラットフォームであり、広告ビジネスと同じ考え方です。
広告モデルは、既に確立されたビジネスモデルであり、従うべき実証済みのベストプラクティスを有します。これは、確立されたビジネスモデルであり、実績のあるベストプラクティスです。
今回、新しいのは、会社がその広告モデルをどのように実行するかということです。(=トークナイゼーションを使ってオーディエンスを引きつける)
創業者の方へ: 既存の確立されているビジネスモデルとトークナイゼーションを組み合わせることで、成功の可能性を高めつつ、イノベーションを生み出すことができないか考えてみてください。
2. トークナイゼーションは、Product-Market-Fitの問題ではなく、Cold-Start-Problemを解決するために使用します。
もしSweatcoinが独自のトークンを持たずに、同じmove-to-earnのアイデアを実行したらと想像してください。
オーディエンスを集めるには、人々を歩かせるために現金を支払わなければならないでしょう。しかし、現金を得るためには、ブランド・パートナーに広告を売らなければなりません。しかし、ブランドパートナーを惹きつけるためには、オーディエンスが必要です。これは、マーケットプレイスプラットフォームを立ち上げる際の典型的な鶏と卵の問題です。
トークナイゼーションによって、Sweatcoinはこのコールドスタートの問題をエレガントに回避することができました。
トークンを支払ってユーザーを歩かせる(初期費用は不要)→オーディエンスを集め、ブランドパートナーを獲得→ユーザーがトークンを獲得することで得られる製品割引分を、運営が広告収入を原資に負担することで、トークンの価値を支えます。
トークンはある意味、プロジェクトを軌道に乗せるための、ユーザーからの「つなぎ融資」のような役割を果たします。しかし、これがうまくいくためには、プロジェクトが実行可能である必要があります。つまり、実際のユーザーの問題を解決し、トークンの有無にかかわらず利益を上げることができるものであることが必要です。
トークンは、プロジェクトにキャッシュフロー管理における大きな柔軟性を与えます。しかし、実行不可能なプロジェクトを実行可能にするものではありません。
創業者の方へ:トークンがなければ、あなたのプロジェクトはどのように機能するか考えてみてください。それでもそのプロジェクトはうまくいきますか?
3. トークンのインセンティブを実際に重要なKPIに集中させる
トークンは、ユーザーの行動にインセンティブを与えるための素晴らしいツールです。しかし、実際に関連するパフォーマンス指標(KPI)が明確でなければ、重要でないものに強力なツールを浪費してしまうことになります。
例えば、取引に報酬を与えるNFTプラットフォームは、ウォッシュトレードの問題(一人でウォレットを複数用意して取引を自演する問題)に帰結します。借入にインセンティブを与えるDeFiのレンディングプラットフォームは、スタックローン(ユーザーが借入額を担保にさらに借入を繰り返す)に帰結します。
これらのインセンティブは、特定の指標(取引ボリューム、TVL)の一時的な改善につながりますが、結局のところ、プロジェクトの長期的な健全性にはそれほど関係がないことが判明しています。
Sweatcoinの場合、ここにジレンマがあります。このアプリは、ユーザーが何もしなくても、バックグラウンドでユーザーの動きを追跡します。ユーザーにとっては便利ですが、ブランド・パートナーにとっては、オーディエンスのエンゲージメントが必要で、ユーザーがアプリを開かなければ、エンゲージメントが得られません。
だから、アプリのエンゲージメントは重要なKPIなのです。しかし、どうすればユーザーにアプリを開かせることができるのでしょうか?
これを解決するために、Sweatcoinは、ユーザーがアプリに関与することで追加トークンを獲得できる様々な方法を構築しました。例えば、1日に1回、アプリを開いてこのボタンをクリックすると、その後20分間の歩数に応じて2倍のトークン報酬を得ることができます。
創業者の方へ。トークンのインセンティブは無料ではありません。どのようなユーザーアクションが自社の成長と収益に実際に重要なのかを把握し、それらにインセンティブを集中させましょう。
4. メタバース外からの需要を取り込む
メタバースは大流行していますが、実はメタバースの経済は現実の経済と比べると、今のところ微々たるものです。
石ころ注釈:メタバースはここではおそらくデジタルの世界といった広義の意味で使われていると思います。
純粋にデジタルの世界で動いているWeb3のプロジェクトは、製品需要につながるような活気のある経済エコシステムがなく、自己参照的なポンジ・スキームとして終わる傾向があります。
あるいは、彼らは互いに需要を調達しあっていますが、これもあまり良くありません。なぜなら、メタバース全体のエコシステムは、少なくとも現段階では、それほど多くの本物のユニコーン・プロジェクトに力を与えるほど大きくないからです。
だからこそ、Web3が主流になるためには、いかにして付加価値と需要を実経済からひっぱり、成長を促すかを考える必要があるのです。
リアルとメタバースの両方で多様なブランドとのパートナーシップに焦点を当てることは、Sweatcoinの成長を持続させるための重要な部分です。
創業者の方へ:クリエイティブな方法で、いかにリアルエコノミーとメタバースの架け橋になれるか考えてみてください。
(ちなみに、ここまで気に入ってくれてますか?私はあなたがWeb3&マクロについて賢くなるのに役立ちます。私のニュースレターを購読して最新情報を入手しましょう👉 https://taschalabs.com/newsletter )
5. トークンの供給量を制限するよりも、トークンの実用性が重要
Sweatcoinには供給上限がなかった。それでも、ユーザーがアプリを使うのを止めることはなかった。今日の時点では、Sweatcoinが取引所で取引されていない、つまりユーザーが売ることができなかったので、供給量はそれほど問題ではない、と主張するかもしれません。
石ころ注釈:Sweatcoinは、現時点ではアプリ内ポイントのような位置づけです。
それは事実です。しかし、トークンは、ブランドパートナーからの製品やサービスと交換するために使用され、最終的にはSweatcoinの収益に裏打ちされているという点で、本当の実用性を持っていることも事実です。そのため、売る機会がなくても、ユーザーがトークンを積み重ねる根本的なインセンティブがあります。
ユーティリティ・トークンの場合、理想的なトークン放出率はプロジェクトの成長率と一致すべきです。そうすれば、トークン価値を損ねることはありませんが、同時に不必要に金融投機を助長することもありません。
しかし、特に暗号市場のボラティリティを考えると、それは難しいことです。そこで、次の話につながります:
6. 暗号市場のサイクルから初期段階のプロジェクトを保護する
Sweatcoinは当初、ブロックチェーン上でトークンを発行しませんでした。当時、必要な取引スピードとボリュームを処理できるブロックチェーンがなかったからです(9月にNear上のNEP-141トークンに変換される予定です)。
今思えば、もっと早くオンチェーンでトークンを発行していれば、投機的な導入、市場流動性の恩恵を受け、もっと早く成長できた可能性があります。
しかし、その反面、クリプト市場の大幅な価格下落の影響を受けていたでしょう(例:競合のSTEPNのユーティリティ・トークンは5月以降99%下落しました)。
現実には、暗号市場は現段階ではあまりにも小さく未熟であり、トークン間の価格トレンドに大きな差異を生じさせることはできません。ほとんどのトークンの価格相関は、トークンの内容に関係なく80%以上です。
石ころ注釈:例えばBTC、ETH、SOLが連鎖的に下がる中、(仮にすごく順調だったとしても、)STEPNのGST・GMTトークンだけ価格を維持させるのは現時点では難しい、という話かと思います。
Sweatcoinが、オンチェーンで取引可能なトークンを持たないことが、プロジェクトの初期にクリプト市場の変動に巻き込まれることから守ってくれました。もし巻き込まれていたならば、その混乱は非常に困難なものだったに違いありません。
創業者の方へ:2次流通市場のトークン流動性には大きな価値があります。それがトークナイゼーションのポイントです。しかし、市場のボラティリティがあなたのコアビジネスにどのような影響を与えるか、そしてそれに対して何ができるかを考えてみてください。そして、あなたのトークンが初日から取引所で取引可能であることは、必ずしも良いことなのでしょうか?
7. ステーキングは付加価値を分配するために使うのであって、トークン需要の問題を解決するために使うのではありません。
多くのWeb3プロジェクトがProduct-Market-Fitを欠き、トークンの本当のユーティリティを持っていないため、多くのプロジェクトが、弱い通貨を守ろうとする第三世界の国の古い手口に頼っています。
そのようなトリックの1つは、新しいトークンの放出から生じる高い金利と引き換えに、ユーザーがトークンをステーキングするインセンティブを与え、トークン需要の問題の缶を、道の奥に向かって蹴ることです。(問題を先延ばしにする)
資本流出を防ぐために金利を上げることは、緊急時の正当な手段ですが、トークンやフィアットの価値を長期的に支える手段では決してありません。
正しく行われれば、ステーキングはユーザーのエンゲージメントとロイヤリティを高める素晴らしい方法です。そして、プロジェクトの成長による利益をユーザーと共有することは、結局のところWeb3の理念でもあります。しかし、ステーキングの利回りが持続可能であるためには、トークンの放出ではなく、ビジネスの利益から来る必要があります。
創業者の方へ:もしあなたがまだ分配できる収益がないけれども、ステーキングを提供したいのであれば、少なくとも将来の利益をどのようにステーキングの利回りに変換し、後者を持続可能にするかについての実際のロードマップを持ってください。
そうしないと、トークンの不健康な均衡を永続させることになり、後で抜け出すのが難しくなるかもしれません。
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(翻訳終わり)
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